毎年、夏の甲子園はテレビでも全試合中継されて、他の学生スポーツとは比べ物にならないほど高校野球は全国から注目が集まりますよね。
やっぱり、野球の華と言ったらホームランですから、甲子園で結果を残した強打者たちにはプロ入りのドラフトが控えていることもあり注目が集まります。
知っている方は多いと思いますが、プロ野球は木製バットを使っているのに対し、高校野球は金属バットの使用が認められています。
金属バットでボールをとらえた時に鳴る「カキーーン!!」という音は高校野球独特です。
そこで、なぜ高校野球は金属バットを使うのだろうと疑問に思ったことはありませんか?
プロが木製バットを使っているなら、同じ木製バットを使った方が選手のためにもいいのではないかと思えますよね。
ということで今回は、高校野球が木製バットではなく、金属バットを使う理由を紹介していきたいと思います。
目次
そもそも高校野球で使ってもいいバットは?
高校野球では金属バットを使用するのが一般的ですが、実は木製バットも試合で使うことが認められています。
しかし、金属バットの方が木製バットよりも芯が大きく打球も飛びやすいため、木製バットを試合で使う人はまずいません。
木製バットの材質はアオダモが一般的ですが、竹で出来た竹バットの使用も認められています。
竹バットは、他の木製バットと比べて耐久性が強く、なかなか折れないそうですね。
それと、アオダモ製などの他の木製バットと比べても芯が狭く、ボールを芯でとらえるのが難しいそうです。
その折れにくく、芯が狭いという特性を活かして、強豪校などでは確実にバットの芯でボールをとらえる練習として、竹バットを使うことがあるそうです。
高校野球も木製バットに統一しようという意見は多い
そもそも、高校野球が行われるようになった戦前は、もちろん木製のバットが使われていました。
金属バットが使われるようになったのは1974年からで、そこからは木製バットが高校野球で使われることはほとんどなくなりました。
しかし、野球評論家などの中には、また木製バットに戻すべきだという意見は多いです。
プロ入り選手が木製バットへの適応で苦戦する
先ほど書いた通り、プロでは木製バットが使われています。
そのため、高卒からプロ入りした選手が、最初に直面しなくてはいけない課題が「木製バットへの適応」です。
素人が考えると、ただバットの材質が変わっただけなんだから、打球は飛びにくくなるだろうけど、バットに当ててヒットにすることに影響はないだろ。と思えてしまいますよね。
しかし、実際に高卒からプロ入りした選手の話では、打球が飛びにくくなるのはもちろん、芯も小さくなるため、
多少振り遅れたり芯がずれても、感覚的にはホームランになっていただろうあたりが、内野ゴロになってしまうそうです。
その感覚のずれが打撃に悪影響を与え、高校野球では突出した成績を残したが、プロでは全く結果を残せなかったという選手が何人もいます。
この選手たちが結果を乗せなかったのが、バットの変化のせいだと断定するには証拠がないですが、仮にそうだとすると有望な選手の才能の芽を摘んでしまっていることになりますよね。
国際的な流れ
次の理由に、国際的にも木製バットに統一することが進んでいるという理由もあります。
高校野球が終わると毎年、U18のワールドカップやアジア選手権が行われているのをご存知でしょうか?
甲子園で活躍した各チームのエースや中軸打者たちが、日本代表として一つのチームに集まるり、各国の代表チームと戦います。
高校野球ファンとしては、その年の高校野球のオールスターのようで、毎年、楽しみにしています。
この大会にはドラフトを控えた、高校野球のトップクラスの選手たちが集まるので、当然プロのスカウト達も大勢が視察しに来ます。
そして、スカウトたちがこの大会を見に来る大きな目的は、打者の「木製バットへの適応力」を見極めるためです。
このU18の大会では、金属バットの使用が禁止されており、木製バットが使われています。
実はオリンピックでも、昔は金属バットが使われていましたが、2000年のシドニーオリンピックより金属バットが禁止されました。
禁止された理由は、大リーグから強い打球が飛びすぎて、投手や内野手が危険だという苦情が入ったからだそうです。
そのオリンピックの変更を受け、U18のワールドカップは2004年より、アジア選手権は2007年より金属バットの使用が禁止されました。
オリンピックが木製バットに統一したことにより、高校生も国際的には木製バットを使用するようになっていったのです。
その中で、日本の高校生は金属バットを使い続けています。
そのため国際大会では、慣れない木製バットを使うことになるので、いまいち結果を残せていませんよね。
体格の変化
時代の流れによる体格の変化も、木製バットに戻すべきだという理由になるでしょう。
プロやレベルの高い選手たちにとっては、打球が強くなりすぎて危険と言われていますが、体格がそれほど大きくない高校生には、金属バットがちょうどいいとされてきました。
しかし、高校野球に金属バットが導入された当時と比べ、選手たちの体格は明らかに大きくなっています。
これは、体格の発達が著しい小中学生のときから、食事で栄養をとって身体を大きくするのも、トレーニングの一貫であるというのが浸透していった結果だと思います。
昨年のドラフト1位の清宮選手や安田選手なんかは、高校生の時からプロより凄い体格してましたよねw
高校生でも立派な体格を持つようになった現在では、木製バットに統一してもホームランがほとんど見れなくなるなんてことはないのではないでしょうか?
木製バットに統一できていない理由
なぜこんなにも、木製バットに統一する理由があるのに、金属バットを使い続けているのか。
次は、その理由を説明していきます!
金銭的な問題
金属バットは、折れて使えなくなることはありません。
しかし、木製バットは、折れて使えなくなってしまうことが多々あります。
プロでの試合での話ですが、1打席の中でバットを3本も折ってしまった選手がいるほど、当たり所が悪いと簡単に折れてしまいます。
プロの選手は、バットを自分好みの特注で買う人が多いですから、折れてしまった時のために、シーズン前に1年間用で数十本用意するらしいですね。
木製バットは安いものでも5000円~10000円ぐらいはします。
高校生がそれを自費で数本揃えるとなると、かなりの出費になっていしまいますよね。
木製は打球が飛びにくい
先ほどは、今の高校生は体格が大きくなっているから、木製バットでも打球を飛ばせるのではないかとか書きましたが、それとは対極になる理由ですね。
確かに、金属バット導入当時と比べて、身体が成長したのは確かですが、一部の選手を除きプロよりも体格はできてなく、木製バットでは長打をなかなか打てない選手がいるのも確かです。
あと、プロ入りした選手が適応に苦戦するとも書きましたが、プロには進まない大多数の高校生にとっては、そんなことはどうでもいいことです。
ゲームバランスを考えると、身体がさほど大きくない高校生でも、ホームランが打ちやすい金属バットの方がいいのかもしれませんね。
韓国の高校野球は金属バットを禁止にしたら、パワーヒッターが減った!?
韓国の高校野球では、2004年にU18ワールドカップで、金属バットの使用が禁止されたのを受け、2005年より金属バットの使用が禁止され木製バット統一されました。
このバットが変更されたことによって、2004年の高校野球の本塁打数が273本だったのに対し、2005年は55本まで激減したそうです。
当然、今まで柵越えしていた打球が、外野フライになるというケースが増えたのでしょう。
この本塁打数の変化が、高校野球の指導法に変化をもたらせました。
試合に勝つために長打を捨て、コンパクトなスイングで確率を重視した打撃をするようになったのです。
今までは、金属バットの恩恵を受けながらも、フルスイングで長打を狙っていたバッターが、プロ入りしてバットの変化に苦しみながらも、パワーヒッターとして球界を代表する選手に育っていました。
それが、早いうちから木製バットを使うことになったがために、強打者になっていたであろう高校生たちが確立を重視するスタイルで育つようになってしまいました。
そのため、高校野球だけではなく、韓国球界全体で長打を打てるパワーヒッターが減ってしまったんだそうです。
日本とは逆に、国際的な流れにいち早く反応し、木製バットに統一したようですが、それはそれでデメリットが生じているようですね。
野球の本場アメリカはどうしてる?
では、野球の本場アメリカの高校野球ではどうしているのか気になりますよね?
簡潔に伝えると、アメリカの高校野球でも金属バットは使われています。
ちなみに、大学生も金属バットを使うのが主流です。
しかし、州によっては危険性を考慮して、金属バットの使用が規制されているところもあります。
なので、△△△州の高校は金属バットを使っているが、○○〇州の高校は木製バットを使うという風になっているそうです。
また、アメリカ全体でも金属バットの危険性は懸念されており、
金属バットを改良し、反発係数を抑制して、芯の大きさを小さくした、木製バットと同じような性能のものだけを規制して使わせています。
まとめ
いかかでしたでしょうか?
さまざまな事情や理由があり、一概には金属バットを使い続けてもいいとも、木製バットにいますぐ統一すべきとも言えないと思います。
しかし、日本の金属バットの性能は年々向上しているそうで、各メーカーが他のメーカーのものよりも、より強い打球を遠くまで飛ばせるよう改良を重ねています。
高校野球を見ていても、明らかにタイミングを崩されて打たされたような打球が、グングン伸びてスタンドに入ってしまうのを見ると、このままではダメな気がします。
アメリカのように、反発係数などを調整して、木製バットに近い性質を持ち、なおかつ折れにくい金属バットを使うというのが、最善の選択だと私は思います。